音楽療法を二刀流でみる  その意義は[2018.05.07]

音楽療法を二刀流でみる  その意義は

  後藤幸生

 二刀流というのは、いま、野球のアメリカ大リーグで大谷翔平(しょうへい)選手が大きな話題になっている。ここで、私が取り組んでいる「音楽療法」の考え方にもこれが一つのヒントとなる。つまり従来からの音楽療法の影響や効果について、より深く医学的科学的に分析することによって広く健康長寿に寄与するため、どちらかと云うと従来からの静的な音楽療法に動的なものを付加したMcT (Music care Trampoline) 療法の研究を継続中であるが、これがこの二刀流にいくつかの面でなるのかなと思うからである。すなわち、まずその測定対象の一つ目が心拍変動という「心電情報」の解析・分析であるが、云うまでもなく心臓は人間個人にとっては生命そのもの。そして二つ目は、その解析法に自然界の音波1/f ゆらぎ理論と虹のスペクトルをヒントにした「1/f スペクトル解析法」を用いているということである。

 そこで、その中身について考えてみたい。私たちこの地球上で生きる人間一人一人は、それこそ一つの小地球であって、親元の地球上で生じている自然現象の変動に常に左右されている。例えば地震という地球の骨格(岩盤)の突然の歪みとその修復現象、これが一つの小地球内部で生じた同様の歪み(病気など)は、健康ならば自らが有する体内修復機能(自律神経機能やホルモン、免疫などや睡眠)で修復しており、その修復反応の姿は様々の体内のゆらぎ現象;例えば休むことなく動き続ける脳波や心臓拍動リズムといったゆらぎ現象に見られる。健康かどうかを簡単にスクリーニングするために血液や心電図検査は診療現場では欠かせないが、このゆらぎ現象はこれらでははっきり分からない。しかしこの心電図のRR間隔変動時間一つ一つの長さを1/1000 秒単位という細かさで計測し、これら1本1本を縦に次々並べ連ねると、上下に変動するゆらぎ波形(心拍変動)が得られる。これを自然界の虹の様に周波数別に解析したこの‘ゆらぎ解析結果’で、交感と副交感神経機能の2面のみに限定して解説されてきたが、実際の生体内はそんな単純なものではなく、もっとマルチな‘バランス反応’でお互いの調整が繰り広げられているのである。そこで強調したいことは、これらをより詳しく分析し‘ヒトのこころ’まで読み取るため、一つのヒントになったのは、自然界では季節によっては明るい春先など、各種の植物が花を咲かせてヒトの‘こころ’を和ませてくれること、また‘森林を吹き抜ける風の音やそこを流れる小川のせせらぎ音’‘風鈴の音’など、その環境下に身をおくと‘気持ちが癒され、心地よい気分’になること。これを‘1/f ゆらぎ’音波というが、これは自然界のゆらぎ現象に小地球体内のゆらぎ現象が同期して、同じようなゆらぎ方、つまり最もバランスがよく、雑音が入っていないゆらぎ状態になっている時にそう感じているので、これを1/fゆらぎ音波と称するのだという音響学の説明が一つのヒントになって、これまで一般に行われてきた心拍変動のゆらぎ周波数解析結果を両軸対数グラフに変換することによって、上述の自然界の最もバランスの良い音波と同様に、周波数が大きくなるにつれて量的には減少するという右下がりのグラフになることを知り、これを利用して不可能とされたヒトの‘こころ(気持ち)’を数多く数値化することに成功した。音楽は一つの人工音波であるので、この解析分析方法を用いて分析すれば、音楽を聴くヒトの気持ちも数値化できる。これが「バランス指数」という指標の中の一つ「認知情動指数」であるが、これを提案して以降 長年にわたって関連した研究に用いてきた。

 ここでもう一つヒントになったことは、われわれ動物と共にこの地球上に生きる樹木植物も、この自然界の音を聴いてなびき、風雨にゆり動かされて‘人間の脳’に相当する‘根’を、よりしっかり張り巡らせて成長し、花を咲かせていること。つまりこの‘ゆり動かす’ということは、寝たきりなど動けない病的状態のヒトの体や脳に何らかの影響を生ぜしめうるというヒントになった。これは先述した様に、動的要因を付加したMcT 療法の良さや意義についての良い説明になる。そもそも人間は古代より音楽を聴いたり、見たり嗅いだり味わったり肌で感じたり五感を介していやでも体内に入ってくるこれら情報信号を脳で受け取り、体内でバランスを調整したうえで、各種の伝達系を介して内臓とりわけ休むことなく動きつづけている生命そのもの心臓にも伝達している。従って、この心拍リズムのゆらぎ方を自然界の法則に照らして1/f ゆらぎ周波数解析法を用い分析した‘心電情報’の内容には、脳や感情といった情報も含まれていることになる。付言すると、元気さの目印となる体表面の全ての筋肉状態、心臓筋肉も内臓の中でも唯一同じ横紋筋仲間であるということ。ここが重要、しかもこの測定法は、他の高価な大型機器と違って、どんなベッドサイドででも、短時間の繰り返し測定も、例え対象が動いていても、長時間、必要な時間だけ測定できるという大きなメリットを有している。

 こんなふうにして、人工音波である音楽曲を聴取中のヒトの各種状態での影響や効果も含め長年研究してきた成果を、このたび一冊の本に纏めて学樹書院より出版することになった。その書名が「健康なリズム&バランス 図説 音楽療法—-McT 運動療法—」という二本立ての内容であって、本法は一種の治療法として病気や災害交通事故で寝たきりからの回復途上にある脳障害者、そして少子高齢化時代における高齢認知症や 発達障害児の問題といったリハビリ・介護・福祉関係など、健康長寿を願う諸問題も取りあげ、従来からの音楽療法に加え、自らのからだも他動的に動かすいわゆるMcT運動療法として、その対象も拡大してきたが、一方では、これが治療面だけでなく、診断面でも役立つこと、つまり例え 起立二足歩行ができない無意識状態で寝たきりのヒトでも、生きている限りは、その体内から発っしている上記無言の心電情報から、今まで不可能だったそのヒトの‘こころ’を読み取ってあげることを可能にしたのが「バランス指数」という指標、そしてその解析値から得られる心身両面からのバランス調節反応具合の大小強弱の評価法などを、どなたにも分かり易く見せる一つの五角形バランス評価図や‘健康偏差値’といった学業成績並みの数値による表現法など、最近の健康長寿を願う動きにも対処した健康レベル、生命力といった元気さレベルの診断法まで、まさに治療と診断法といった二刀流を図説方式という見開き頁の左右に図と解説を対比して見て・読んでいただくものであって、そのほかメモその他を一時的に入れておける薄い小袋フアイルまで用意された「これまでにない形式の書籍」として、ご一読いただけるように配慮されているので、多くの皆様方には是非ともこの本を手元に置いて、じっくりお目通しいただくようお願いしたいものである。
以上、平成の終わりの春の良き日に
▲▼▲▼▲「図説 音楽療法」は近日発売予定です。