人文科学系の新刊

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スピノザーナ15 スピノザ協会年報 2014-2016
スピノザ協会編
[A5判/並製/220頁/定価2200円+税/ISBN978-4-906502-84-4]2017年1月刊

約2年ぶりの刊行、スピノザ協会の年報。柏葉武秀氏による工藤喜作『スピノザ哲学研究』の書評(書評というよりも工藤哲学論とも呼ぶべき力作!)も収載されています。

【スピノザ協会の言葉】 デカルト、カント、ヘーゲルらが西洋哲学の主軸であるとすれば、西洋の思想が方向を見うしなうたびに注目されるのがスピノザである。スピノザはコンヴェルソ(改宗ユダヤ人)の子孫として17世紀オランダに生まれ、ユダヤ人共同体から破門されたのち、西欧の思想伝統におさまりきらない異色の哲学を展開した。20世紀にも、とくに60年代以降、政治論を中心に、スピノザの思想にたいする根底的な読みなおしの気運がたかまり、世界的にかつてない論争状況がつづいている。
『スピノザーナ:スピノザ協会年報』は、スピノザをめぐる批判的議論をうながすことを目的に1999年に創刊された。
編集方針としては、せまい意味でのスピノザ研究にとどまらず、哲学、宗教、政治、文学、歴史、現代の諸問題などはばひろい分野をふくみ、長期的な意義をもつ研究を紹介し、スピノザ研究の論争的土俵を提供することをめざしている。主要なスピノザ研究者があたる投稿論文の審査は厳格である。

【論文】スピノザ『政治論』におけるjus (法/権利) の両義性(上野 修)/《スピノザ書簡集》を作る ̶̶ リマスターとリミックス(平尾昌宏)/「神即自然」と「人間に固有の自然」 ―― ヒュームのスピノザ主義(矢嶋 直規)/「信仰と哲学の分離」と創造の問題 ―― アルファカールをめぐる 『神学政治論』の典拠操作(高木久夫)
【インタヴュー】神は愛によってしか捉えることができない―― 工藤喜作氏の〈スピノザ研究と私〉(吉田和弘)
【書評】工藤喜作 著『スピノザ哲学研究』 / 柏葉武秀
【資料紹介】スピノザとの出会いに関係するライプニッツの二つのメモ―― 訳と解題(翻訳・解題:寅野遼)
【協会事務局より】スピノザ協会について・諸規約 スピノザ文献オンラインネットワークSBONのごあんない講演・研究会一覧 (2014-2016年度)『スピノザ協会会報』主要記事 (1990-2015年度)

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報復の連鎖 権力の解釈学と他者理解
A.
シェップ/齋藤博・岩脇リーベル豊美[共訳]
[四六判/並製/390頁/定価3500円+税/ISBN978-4-906502-39-4]
権力というものはいつの間にか暴力に転化する!思考の違いを処理できなくなった感情の衝突に暴力の始原がある。他者への理解を放棄した時,人は暴力の歯止めがきかなくなる。本書の解釈学的問いかけは,今日のわれわれが直面する国家の主権をめぐる諸問題と深く関わるだけでなく,暴力や報復の連鎖を断ち切るための哲学的視点を提供しようとするものである。【目次】 日本の読者によせて/訳者解題 /序章/I 解釈学の旧来の理解概念とその限界 (M・ハイデガー,H・G・ガダマー,G・H・ミード)/II 自分のものの理解と他人のものの理解 解釈学と反解釈学を考究の射程に(E・フッサール,J・ラカン,J・デリダ)/III 正義という三元的位置からの他者理解か,あるいは汝の要求という二元的位置からの他者理解か(J・ロールズ,E・レヴィナス)/IV 男女の性差関係にみられる理解の諸葛藤(S・フロイト,J・ベンジャミン)/V 理解,攻撃そして合意――ニーチェに関する付説(F・ニーチェ)/VI 経済に関わる理解の概念(A・スミス)/VII 政治的な理解の問題(C・シュミット,J・デリダ)/終章/訳者覚え書き/出典・参考文献/原註
★★★批評・評論・読者の言葉
★★★【図書新聞、書評】
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新・精神病理学総論 人間存在の全体
K ヤスパース/山岸 洋[解説・訳」
[四六判/並製/390頁/定価4000円+税/ISBN978-4906502394]
 今日、精神医学は、おそろしい停滞の状況の中にある。医療現場に身を置く医師として、他の医学分野の急速な進歩からはほとんど縁のない地点に足止めされているような感覚を私たちは味わっている。私たちの目の前には、私が医師になったころと本質的には何も変わらぬ状況が広がっている(もちろんそうは感じていない能天気な人たちもいる。それだけに精神医学の危機は根深いのである)。その目の前にあるものは私が医師になる前にも長くほとんど同じままであったのである。私たちは、一九九〇年代以降、脳の機能についての生物学的研究のすばらしい進歩に目を奪われていたのだったが、しかしそこからの成果によって私たちの臨床が三〇年前と比べてどれだけ変化したと言えるのだろうか。精神科診断の国際化と操作的基準導入のために精神科医の莫大な労力が投入されているが、それは患者や社会にどれだけの利益をもたらしたのだろうか。新たな抗精神病薬と抗うつ薬の導入が次々とおこなわれてきたが、私たちはむしろ無定見な処方を、こともあろうか医学の素人からさえ指摘される時代に直面している。精神科医の仕事のあり方全般に対しても、社会の一部から厳しい批判が巻き起こりつつある。
 精神医学は、着実な科学的進歩という面で、明らかにこの一世紀にわたってヤスパースの時代に抱かれていた期待を裏切りつづけてきた。つまり、「総論」という書に記された各論的部分において、精神医学は当時のままに留まっている。では「総論」の総論的な部分であるこの第六部に述べられていることは、この精神科医療の停滞した今日の状況をいかなる意味において変える力を持っているのだろうか。

立ち読みPDF(訳者解題)


9784906502387

スピノザ哲学研究
工藤喜作
[A5判/上製/532頁/定価5000円+税/ISBN978-4-906502-38-7]
著者は日本のスピノザ研究をリードしてきたパイオニア的存在として知られる。それ以前のスピノザ研究は、欧米の哲学研究の紹介の域にとどまることが多かったが、工藤氏は汎神論、ユダヤ教、キリスト教に対する深い理解をベースに、日本人にも親しみやすいスピノザの全体像を本書において描き上げた。1972年の刊行以来、スピノザの形而上学、方法論、汎神論、宗教論、倫理学を核とした論考は、多くの研究者らを啓発し、今日に至るまで有形無形の影響を与えてきた。今日にしてはじめて甦る伝説の名著。【主要目次】 汎神論的先駆思想との関係 信仰と理性 神の属性としての延長概念 無限の延長概念、自然の法、理性と経験 ボイルとスピノザ 身体の観念としての精神 体系合理化の方法としての幾何学的方法 幾何学的方法の限界 属性の無限数 神の因果性 個物の本質と存在 存在の限定 コナツス 「限りの神」について 直観知の諸相 愛と認識と宗教 形而上学的宗教 スピノザとゲーテ(あとがきにかえて) 付録。