(書 名) |
POWER MOOK 《精神医学の基盤》[2] |
(副 題) | |
(編 者) | 責任編集=田島治(杏林大学名誉教授)/張 賢徳(帝京大学教授) |
(著 者) |
10年以上にわたり年間3万人以上の自殺者が出る状況が続いている。そしてうつ病対策の中心的な役割を担ってきた精神医療に対する信頼が失われはじめている。一方。うつ病の概念は大きく広がり、うつ病の診断、治療についての批判が、医療界だけでなくマスメディアにおいても目立ちはじめている。抗うつ薬の功罪が語られるが、専門医はうつ病診療の現状をどう考えているのか。この特集では、従来みられなかった緊張感のある対談や討論を含めて、いまもっとも熱く語られる精神医学のトピックを取り上げる。精神医学領域で異色のアプローチを追究する精神科ムック、待望の第2弾。
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2015. 7. 学樹書院 ISBN978-4-906502-51-6 C3347 |
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目次 | 本書について | 著者について | 書評・その他 |
精神科病院における入院治療の闇を告発した往年(1970年)の「ルボ精神科病棟」の現代版というべき本である読売新聞の記者佐藤光展氏の「精神医療ダークサイド」(講談社現代新書、2013年)の指摘は、臨床の現場をよく知るものにとっては、身近に起こっている問題であり、一部のマスメディアの偏向的な出版物と対抗意識を燃やすべきものではない。偶然にも今日のうつ病問題を提起した笠原嘉先生の名著「軽症うつ病」も同じ出版社のシリーズ(1996年)であり、佐藤氏は同紙の賞も獲得した医療問題のシリーズ「医療ルネッサンス」を担当した優れた記者でもある。 むしろ精神科医はそこで指摘されている数々の問題を真摯にみつめ、どうすべきかを考える必要がある。実は今日のうつ病治療を中心とした精神医療の問題の本質はもっと根深い。精神医療の静かな第四の革命ともいえる新規向精神薬の登場と操作的診断基準の普及により、かつては医学的な治療や薬物療法の対象とならなかったごく普通の人々が、終わりの見えないまま服薬を続ける時代となった。疾患概念が拡大され、臨床試験のエビデンスが最大のマーケティングの武器として利用されることとなったことにより、医療の本質が歪められ、治療のアートが失われつつある。すなわちdisease mongering(病気を売り込むこと、病気作り)とエビデンスに歪められた医療の登場である。
目次 (エッセイ:精神医学の基盤) 診察室の外で─ 3 題/広瀬徹也 (特集記事)
対談「最近のうつ病診療の傾向をどう考えるか」
今日のうつ病診療における問題点と課題 …………………松浪克文 うつ病の論理と倫理 医療人類学的視点から ……………… 北中淳子 マスメディアとうつ病……………………… 岩波 明
II 診断の論理と倫理 うつ病診断・治療の論理と倫理 過剰診断の問題,過少診断の問題 ………… 張 賢徳 臨床精神病理学的視点から見たうつ病の診断学……………… 古茶大樹 III うつ病治療の論理,実践,展望 今日のうつ病診療における課題と展望…………………… 中村 純 日常診療におけるうつ病(1) プライマリケア医の立場からの実践的治療論 …… 井出広幸 日常診療におけるうつ病(2) 総合病院から本物のうつ病を再考する………… 大坪天平 日常診療におけるうつ病(3) 労働者のメンタルヘルスケアの視点 ……… 桂川修一/黒木宣夫 薬物療法の効果とリスク 抗うつ薬の有効性と安全性をどう評価するか ……… 仙波純一 うつ病の精神療法再考…………………… 中村 敬 うつ病に対するneuromodulation……………… 高宮彰紘/鬼頭伸輔 開発中の抗うつ薬と今後の薬物療法の展望…………… 竹林 実/山脇成人 ◆シリーズ: 日本の精神科医療 エキスパートに聞く(2): |
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