書 名 がん産業1(全2巻)     がん産業2
副 題 がん治療をめぐる政治的力関係の構図
著 者 ラルフ・W・モス
訳 者 蔵本喜久・桜井民子

証明されている治療法なのになぜ効かないのか、証明されていない治療法なのになぜ効くのか。がん治療をビッグビジネスとして捉えた視点からみえてくるアメリカのがん政策の実態。

1995. 3   学樹書院

ISBN4-906502-02-4 C0047

四六並製/430頁/税込定価¥3045(本体¥2900)

  目次 本書について 著者について 書評・その他

目 次 
 
謝辞/序文
 第1部 証明された方法(効き目はあまりない)
第1章 信頼の危機
第2章 「証明された」方法
第3章 手術
第4章 放射線療法
弟5章 化学療法
 第2部 証明されていない方法
第6章 非正統派の治療法
第7章 コーレーの毒素
第8章 レイアトリル論争
第9章 硫酸ヒドラジン―非正統派の化学療法
第10章 バートンの免疫学的方法


本書について
アメリカにおける研究のメッカ、メモリアル・スローン・ケタリングがん研究所でかうて要職にあった著者は、アメリカのがん政策の問題点、現在行われている治療の知られざる実態を、がん医療の内側から告発する。「がん医療は慈善ではない。ビジネスである。しかもビッグ・ビジネスなのである」という観点から、がん医療の世界でいま何が起こっているのか、これから何が起こり得るかという問題について、驚くべき調査力を駆使して究明した驚愕の医学レポート。

■著者について
ラルフ・モス (Ralph W Moss, PhD, 1945-)  元メモリアル・スローン・ケタリング・がんセンター副部長。現在、科学ジャーナリストとして活躍する傍ら、米国国立保健研究所代替医学部顧問を勤める。著書に『フリーラジカル』(邦訳『朝からキャビアを』―科学者セント・ジェルジの冒険』岩波書店)『がん治療』『化学療法』などがある。

蔵本喜久(くらもと・よしひさ) 1974年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京薬科大学薬学部助教授。
桜井民子 (さくらい・たみこ) 1964年東北大学薬学部卒業。現在東京薬科大学薬学部講師。薬学博士。


書評・その他
二巻の本は、とてつもないことを告発している。がんという病気を追究、治療するのではなく、研究を脇道にそらせ、ますます不治のものとして定着させようとする米国の巨大組織の動きを具体的にリポートするのだ。医学・医療にも「闇」の世界が広がる。しかも、がんにからんで。なぜならがんはビジネス、それもビッグ・ビジネスだから」と著者。読みながら、近ごろがんで亡くなった知人、友人らの苦しみを思い出す。
巨大組織の動きとは、米国がん協会(ACS)、国立がん研究所(NCI)、食品医薬品局(FDA)など、本来がん制圧の指導的役割をしているはずの公的機関の陰の役割のことである。企業の利潤追求と当局の権威の癒着というべきか。著者のこれまでの著書『がん症候群』ともなったが、それをさらに全面改訂してこの二巻とした。これはもう犯罪だといいたくなる具体例が少なくない。(RONZA、1995年七月号)
本書は、巨大な産業になっているアメリカのガン関連研究・製薬・病院複合体を、詳細に分析したもので、産業論として読んでも興味深いし、世界の最先端を行くアメリカ医学の陰の部分を示す、内幕ものとしても面白い。・・・大部ではあるが、非常に読みやすい内容であり、訳文である。(日野秀逸氏「週刊エコノミスト」1995.9.5.)
・・・この本は告発型の主張に貫かれている。とはいうものの、上下二巻、全八〇〇頁におよぶこの本は、全編にわたり研究論文の紹介と研究者へのインタビュー記事からなっているために、主題が厳しいにもかかわらず、読者は中立的な余裕をもって読むことができる。・・・この本は専門家にとって気がかりな状況を教えてくれる情報源として、得がたい価値をもっている。(名和小太郎氏「週刊東洋経済」1995.10.7.)
世の中の仕組みがそうであるように、がんの世界にも主流派と非主流派とがあり、非主流派が主流派に抑圧されてきた事実が、以前米国で問題になったがんの薬、レイアトリル(アミグタリン)やアンチネオプラストンなどを例にとって詳細に述べられ、また財界や産業界が医薬開発に与えるバイアスについても鋭く迫る。さらにがんの予防の問題点にもふれられている。
 本書はやや非主流派に同情的に書かれているが、これまでの歴史をみると、それぞれの時点でもっとも科学的な目をもって判断しているのは主流派であることを念頭に入れながら読むことも必要であろう。
訳者の一人は薬科大学において教鞭をとっている経済学者であり、医薬産業、行政、医薬の評価などについての深い知識をもっており、もう一人は薬学の専門家である。訳は科学的にも正確でしかも文章的にもすぐれている。
 内容のよさとも相まって、ピュリッツァ賞にノミネートされたといわれるだけあってノンフィクション的にも面白く、[1]、[2]各巻それぞれ400頁に及ぶ大作でありながら最後まで読み通せる。また文献記載もあり、がんの治療や薬の歴史を知るための参考書にもなりうる。直接がんの治療や研究に従事されている方々のみならず、医学、薬学、その他の分野において基礎科学研究に携わる研究者ならびに学生の方々が、科学に対する世の中の仕組みを知り、薬の評価といったことに対する正しい理解をもつためにも本書を一読されることをお薦めする。(蛋白質、核酸、酵素、1995年8月号、VOL.40.NO.11)
筆力は冴えわたり、実名を示しての論証は息をのむばかりである。(儀我壮一郎氏「月刊保団連」)




書 名 がん産業2 (全2巻)     がん産業1
副 題 予防の妨害と科学の抑圧             
著 者 ラルフ・W・モス
訳 者 蔵本喜久・桜井民子

抑圧される治療者たちの論理、巧妙に妨害される予防政策、科学界を席巻するエスタブリッシュメントの暗躍など、衝撃的な事実が明らかにされる。ピューリッツアー賞にノミネートされた渾身のドキュメントの完結編。

1995. 5   学樹書院

ISBN4-906502-03-2 C0047

四六並製/389頁/税込定価¥3045(本体¥2900)

  目次 本書について 著者について 書評・その他

目 次 
 
謝辞
 第2部 証明されていない方法
第11章 リビングストンとがん微生物
第12章 凄絶な闘い―ブルジンスキーとアンチネオプラストン
 第3部 予 防
第13章 予防の妨害
第14章 アスベスト―死の収穫期
 第4部 キャンサー・ビジネス
弟15章 キャンサー・エスタブリッシュメント
第16章 がんと科学の抑圧
 訳者あとがき
 文献
 (資料写真)


本書について
1985年の夏、テキサス州ヒューストンのある診療所に、突然武装した連邦警察官と食品医薬品局(FDA)の執行官の一団がなだれこんだ。待合室の患者たちの目前で、彼らは捜査令状を振りかざしながら、診療所内のカルテ保存用の書類キャビネットをトラックに積み込み、20万枚のカルテをはじめとする資料、患者の治療成績、会計記録、保険の請求書などを押収した。まるで映画の場面を彷彿させる強制捏査の標的とされたのは、患者から絶大な信頼を寄せられていた天才医師、プルジンスキー博士である。強制捜査の表向きの理由は、この医師が開発した独特の薬剤がテキサス州以外にも出回っているらしいという噂の真偽を確認するためであった。これ以後、この医師の名は米国がん協会のブラックリストに載せられ、博士とキャンサー・エスタブリッシュメント(がん医療全体を支配するパワーエリート層)との湊絶な闘いがはじまる・・・。
 第1巻では、アメリカにおける「がん戦争」を支配する今日の正統派の治療の実態、その政治的力関係の現状を大胆に暴露、第2巻では、プルジンスキー博士の苦闘をはじめ、抑圧される治療者たちの論理、巧妙に妨害される予防政策、科学界を席巻するエスタブリッシュメントの暗躍など、衝撃的な事実が明らかにされる。ピューリッツアー賞にノミネートされた渾身のドキュメント。 図書館協会選定図書。

■著者について
ラルフ・モス (Ralph W Moss, PhD, 1945-)  元メモリアル・スローン・ケタリング・がんセンター副部長。現在、科学ジャーナリストとして活躍する傍ら、米国国立保健研究所代替医学部顧問を勤める。著書に『フリーラジカル』(邦訳『朝からキャビアを』―科学者セント・ジェルジの冒険』岩波書店)『がん治療』『化学療法』などがある。

蔵本喜久(くらもと・よしひさ) 1974年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京薬科大学薬学部助教授。
桜井民子 (さくらい・たみこ) 1964年東北大学薬学部卒業。現在東京薬科大学薬学部講師。薬学博士。


書評・その他
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