書 名 そんなに親が悪いのか
副 題  親面接の一つの考え方
著 者 荒井 茂  

問題を起こしている子どもを持つ親の多くは、大変苦しんでいます。何とか助けを求めています。

・・・警視庁少年相談専門職が自らの経験をもとに親面接の原則と実際を提言する。

2012. 10   学樹書院

ISBN978-4-906502-36-3 C1010

A5/並製/144頁/税込定価1470円(本体1400円)


  目次 本書について 著者について 書評・その他


目次

はじめに vi

第1章 親面接の従来モデル
子どもの問題は親が原因か? /親を責めても解決しない/問題は相互間で起こる

第2章 親面接の一つの進め方
親面接の目的は何か /親と良い関係を作る /悪循環から 良循環へ向かう /親を継続的に支援する /受理者の燃え 尽きを防止する 

第3 章 関係機関との連携
関係機関と連携する /警察による送致(通告)

第4 章 親面接のワンポイント
今までの親の対処への質問 ― 親の力を引き出す/親との10分面接 ― 時間が10 分しかなかったら/親子並行面接 ― 親が子どもを連れてきた /遵守事項による指導 ― 子どもが守れる約束をする /親との連絡−良いことを報告する 親一人に一人で面接 ― より対等な面接をする/父(母)の招致 ― 家族で力を出す 122 /親面接の展開 ― 親と一緒に笑う/事態の好転 ― 子どもが動物を連れてきた /子どもの携帯電話対策 ― フィルタリングサービスを利用する

参考文献
おわりに


はじめに (本書について)
今、子どもの問題に対して、親を巡る論議がマスコミなどにおいて盛んに行われています。社会の耳目を集める子どもの犯罪があれば、必ずと言ってよいくらい親が引き合いに出され、専門家や有識者と称する人たちによって様々にコメントされます。ただ、よく聞いていますと、コメントの多くは親自身の問題やしつけの悪さを指摘し、親を否定的に見ているようです。子どもが悪いことをしたのだから、仕方がないということでしょうか。

また最近では、無理難題をふっかけたり、何かにつけ、いちゃもんをつける親をクレーマーとかモンスターペアレントと呼んで揶揄しています。こうした親は昔からいたようですが*、今おもしろおかしくあちこちで話題にされ、本に書かれ、テレビで放映されたりしています。そうされることで、親と関わる多くの方は「そう、そう、その通り! 子どもの問題は親の問題なんだよなあ」と、にやっと笑って溜飲を下げるかもしれません。日頃から、親対応で苦労されている方にとっては、このような親批判は的を射ているのでしょう。

しかし私は、そうすることで、益々親が社会に対して背を向けたり、行動をエスカレートさせてくるのではないかと心配しています。つまり、「子どもが問題を起こすのは親が悪いから」と社会が親を非難する→非難された親は、心を閉ざしたりあるいは自分が悪いと認めたくなくて、行動を改めようとしない→それに対して、社会がさらに強い口調で親を問題視する→益々親が過敏になって、常軌を逸した反撃をする…という悪循環に陥ってしまうことです。このことに気がつかないで、いかに親が問題であるか理路整然と述べても、いかに親が周りを困らせているかと声を大にしても、子どもの問題の解決にはならない気がします。そこで私は、この悪循環を断ち切るために何ができるか考えてみました。自分が経験から学んだものに過ぎませんが、親との面接を通して、親との関わり方をまとめたものです。これから親などの援助職に携わる方、保護司や民生児童委員、少年補導員などの司法・福祉ボランティアとして親と関わる方、保育園・幼稚園や学校の先生方、そして地域のリーダーとして活躍されている方々にも是非お読みいただければ幸いです。

なお、文中にはいくつかの事例を掲載させていただきましたが、これらにはすべて変更を加えてあるか、または、いくつかの事例をつなぎ合わせて、私が新たに作り直しています。特定の方や機関ではないことを、あらかじめご了解いただきたく思います。


◎ 著者について

荒井 茂 (あらい・しげる)
新潟大学人文学部(心理学専攻)卒業。心理職員として警視庁に入庁。心理適性や犯罪被害者支援そして少年相談を担当。現在、少年相談専門職として勤務。臨床心理士。著書『こどもからのSOS―この声が聞こえますか』(共著)、小学館、2000。