感情論理(チオンピ、松本雅彦、菅原圭悟、井上有史訳)

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感情論理
Ciompi, L.: Affektlogik

ルック・チオンピ
翻訳=松本雅彦/菅原圭悟/井上有史

★A5変・上製・500頁 1994(オリジナルは品切れ)
〈三省堂オンデマンド〉書籍として発売中
ISBN4-906502-00-8 C3011

【本書について】
く心的現象を科学的に解明しようとする場合、われわれは“心的なるもの”をさよざまな学問的方法や学派の眼鏡をとおしてみようとする。しかしこうすると、“心的なるもの”はたちどころに、相互にほとんどつながりのない無数の側面・局面に分解してしまう。科学的・学術的な心理学、精神分析の諸流派、人間学、社会学、神経心理学、コミュニケーション理論、システム理論、その他多くの学問領城が、それぞれ「心」についての独自のイメージを描き出している。いわは「ケーキ」という全体のなかから自分達の方法で手に入れることのできるおいしいところだけを取り出しているだけだといってもよい。〉

・・・・・・「心的なるもの」をめぐる現代の知的風土を辛辣に批判する著者は、ピアジェの発生的認識論、フロイトの精神分析、現代の生物学的精神医学を批判的に批承しつつ、横造主義以降のさまざよな思想的潮流、システム理論やオートポイエシスなどの科学基礎論を有機的に援用し、「心的なるもの」の解明に新たな視座を堤供する。本書はシステム理論を人間関係論だけでなしに、精神内過程の解釈にも応用することによって精神のシステムを情報理論的に考察する基盤を与えるとともに、従来まったく別のカテゴリーで捉えられていた「感情」と「論理」を相補的な概念として根本から捉えなおすことを提唱した労作である。人間の精神の正常と異常を契機とした最新の構神医学的人間他の表明であると同時に、現代の心の科学を知るための、きわめてユニークな入門書ともいえるだろう。

【主要目次】
1 精 神 分 析 と シ ス テ ム 理 論 - 矛盾か?
システム理論/精神分析/ナルシシズムに関する現代精神分析の学説
2 感 情 論 理 に つ い て
問題設定-心的なるものの統一性の想定/感情と知性-精神分析の視点/感情と知性-ピアジェの「発生的認識論」/精神分析と発生的認識論の共通点と相違点/「感情論理シェマ」-論理の感情要素と感情性の論理要素/感情と知性、身体と精神/統合の試み-「感情論理」の構造と力動について3 分 化、構 造、照 合 シ ス テ ム
「差異」と「分化」/構造/構造とシステム/システムと照合システム/感情論理的な構造とシステムの本質に関する結論
4 言 語 と 意 識 に つ い て
意識の概念について/言語の概念について/言語は意識と同義か? 記号的機能について/意識創造プロセスとしての中小と「翻訳」/意識、言語、脳/意識の機能について/心の構造の新しい見方
5 矛 盾、パ ラ ド ッ ク ス、二 重 拘 束
分裂病性生涯生成の一仮説/感情-論理照合システムの本質とその生成の概要/矛盾/パラドックス/二重拘束/精神内界の矛盾と家族内人間関係の矛盾との連関/(前)精神分裂病的「自我の弱さ」の生成および構造についての感情論理的仮説/まとめと展望
6 精 神 分 裂 病 性 「 狂 気 」
病前期/感情-論理の観点からみた急性精神病/「狂気」の構造/精神病的「狂い」のメカニズム/「狂い」の慢性かについて/新しい視点からの分裂病観
7 治 療 論
一般的治療原則/治療環境/分裂病患者とのかかわり方/照合システム変換技法/結語

 

執筆者紹介(いずれも執筆当時のものです)
ルック・チオンピ (Luc Ciompi, 1929-)
1929年イタリアに生まれる。元ベルン大学社会精神医学教室教授。ローザンヌ地方の37年におよぶ分裂病患者の予後研究により脚光を浴びるが、本書により科学基礎論や構造主義を駆使した多元的な人間論を展開する俊英として各界からの評価を受ける。著書は本書のほかに、Aussenwelt/Innenwelt(内なる世界、外なる世界)などがある。
松本雅彦 (まつもと・まさひこ)
1937年生まれ。京都大学医学部卒業。現在、京都大学医療技術短期大学部教授。精神科医。著書に『精神病理学とは何だろうか』(星和書店)、訳書にサ―ルズ『逆転移』(共訳、みすず書房)などがある。
菅原圭悟 (すがわら・けいご)
1957年生まれ。1984年京都大学医学部卒業。現在京都医療少年院勤務。訳書にハウリン、ラター『自閉症の治療』(ルガール社)がある。
井上有史 (いのうえ・ゆうし)
1954年生まれ。京都大学医学部卒業。現在、国立療養所静岡東病院勤務。精神科医。著書に『幻覚と妄想の臨床』(共著、医学書院)、訳書に『視覚の神経学』(シュプリンガーフェアラーク)など。